会社が残業代を払わないときの対応|よくある反論と確認ポイント

会社が残業代を払わない場合でも、証拠をそろえて書面で請求し、交渉や労働審判などで支払を求めることができる可能性があります。会社は「残業を命じていない」「固定残業代に含まれている」などと反論することがありますが、反論が通るかどうかは働き方の実態や契約の定めで判断されます。予想される反論に合わせて資料を準備しておくことが、解決への近道です。

目次

この記事で分かること

  • 会社が残業代を払わない状態とは何か
  • 会社のよくある反論と、確認するポイント
  • 支払を求める具体的な手順
  • 会社の対応を待つ間に注意したい時効

残業代の不払いとは

残業代の不払いとは、法律や労働契約で支払うべき残業の賃金を、会社が支払わないことです。法定時間外や休日、深夜の労働に割増賃金を支払うことは会社の法律上の義務で(労働基準法37条)、違反には罰則もあります。

不払いには、次のような形があります。

  • 残業代をまったく支払わない
  • 固定残業代だけを支払い、超過分を支払わない
  • 残業時間に上限を設けて、それを超える分を支払わない
  • 日々の労働時間を15分や30分単位で切り捨てる

会社のよくある反論と確認ポイント

会社の反論 確認するポイント
残業を命じていない・自主的に残っていた 業務量や上司の黙認から、残業せざるを得ない状況だったか。明確に残業を禁止し、代わりの対応もとられていた場合は、認められにくいこともあります。
固定残業代に含まれている 通常の賃金と区別できるか、残業の対価として支払われているか、超過分が支払われているか。
管理職だから対象外 法律上の管理監督者に当たるか(職務・権限、働き方、待遇)。当たる場合でも深夜割増は必要です。
年俸制・歩合給だから 賃金の決め方にかかわらず割増賃金は必要です。含まれていると言われた場合は、区別できるかを確認します。
外回りなのでみなし労働時間制 「労働時間を算定し難いとき」に当たるか。業務の指示や報告の実態を確認します。
残業の申請がなかった 申請制度が実際に機能していたか、上司が残業を把握していたか。
もう時効だ 給料日ごとに3年。時効にかかっていない月が残っていないか。

労働時間とは、会社の指揮命令の下に置かれている時間をいい、会社の明示または黙示の指示で業務をしていた時間は労働時間に当たるとされています(厚生労働省のガイドライン)。「命じていない」という反論には、指示や黙認があったことを示す資料で備えます。

退職時などに「未払い賃金はない」とする書面に署名している場合は、その文言と署名の経緯によって扱いが変わります。書面を持って相談してください。

反論に備えて準備したい資料

  • 指示や業務量を示す資料:残業を頼まれたメールやチャット、業務日報、締切の迫った業務のやり取り。
  • 労働時間を示す資料:タイムカード、勤怠システム、パソコンのログ、日々のメモ。
  • 賃金と契約の資料:給与明細、雇用契約書、就業規則、賃金規程。
  • 会社の説明の記録:会社からの回答書や、面談で説明された内容のメモ。

会社のシステムへの無断アクセスや、業務と関係のない機密情報の持出しは避けてください。

会社が払わないときの対応手順

  1. 未払い額を計算し、証拠を整理する:月ごとに、働いた時間と支払額を一覧にします。
  2. 書面で請求する:内容証明郵便などで、対象期間、金額の目安、回答期限を示して請求します。この請求は時効の完成を6か月猶予する「催告」にも当たります。
  3. 会社の回答を確認する:反論がある場合は、その根拠と、タイムカードなどの資料の開示を求めます。
  4. 交渉する:弁護士に依頼すれば、会社とのやり取りは弁護士が行います。
  5. 労働基準監督署に申告する:法違反の是正について行政指導を求める方法で、交渉と並行して使うこともできます。
  6. 労働審判や訴訟を検討する:交渉でまとまらない場合の手段です。訴訟では、裁判所が未払額と同一額までの付加金の支払を命じることがあります。

静岡労働局の総合労働相談コーナーでは、労働問題の相談や、紛争解決のあっせんの案内を受けることもできます。

会社の対応を待つ間の時効

会社が「検討中」と言って回答を引き延ばしている間にも、残業代は給料日ごとに3年で時効にかかっていきます(労働基準法115条・附則143条3項)。催告による猶予は6か月だけで、猶予中にもう一度請求しても延びません。

交渉が長引く場合は、協議を行う旨を会社と書面で合意し、時効の完成を猶予する方法もあります(民法151条)。どの方法をとるかは、期限までの残り期間を踏まえて判断します。

よくある質問

Q. 会社から「お金がないので払えない」と言われました。

支払能力がないことは、支払義務がなくなる理由にはなりません。分割払いで合意する場合は、金額と支払日を書面に残しましょう。会社が倒産した場合は、国の未払賃金立替払制度を利用できることがあります。要件を満たせば、退職日の6か月前以降に支払期日が来た給与や退職金の未払分について、8割(年齢に応じた上限あり)が立替払されます。

Q. 口頭で「払う」と言われたのに、支払われません。

やり取りをメールや書面に残しておくことが大切です。会社が未払いを認めた場合は、時効が改めて進むことがあります(民法152条)。ただし、承認に当たるかどうかは個別に判断されます。

Q. 労働基準監督署に申告すれば、会社は払ってくれますか?

是正勧告は行政指導で、支払を強制するものではありません。厚生労働省が公表した令和6年の監督指導結果では、賃金不払事案の多くで指導により支払が行われていますが、個別の事案で支払われることを保証するものではありません。

まとめ

  • 会社が払わない場合も、書面で請求し、交渉や法的手続で支払を求めることができます。
  • 会社の反論が通るかどうかは、働き方の実態と契約の定めで判断されます。
  • 反論を想定して、指示・労働時間・賃金・説明の記録をそろえておきましょう。
  • 会社の回答を待つ間にも時効は進みます。

会社の説明に納得できない場合は、残業代請求の相談で、反論が通りそうかどうかを一緒に確認できます。

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