在職中に残業代を請求できる?会社との関係と不利益への備え

在職中でも、未払いの残業代は請求できます。相談の段階では会社に知られませんが、請求や交渉を始めると会社に知られるため、時期と方法を選ぶことが大切です。請求を理由とする不当な扱いには法律上の歯止めがあり、在職中のほうが集めやすい証拠もあります。

目次

この記事で分かること

  • 在職中に残業代を請求するときの基本と、会社に知られるタイミング
  • 不利益な扱いに対する法律上の歯止め
  • 在職中に請求する場合と退職後に請求する場合の違い
  • 在職中に進めたい準備と請求の流れ

在職中の残業代請求とは

在職中の残業代請求とは、働き続けながら、未払いの残業代の支払を会社に求めることです。請求できる権利は、在職中か退職後かで変わりません。

方法は主に3つあります。本人が会社に申し入れる方法、弁護士が代理人として請求する方法、労働基準監督署に申告して会社への是正指導を求める方法です。

会社に知られるタイミングは、段階によって異なります。

  • 相談の段階:弁護士に相談しただけで会社に連絡が行くことはありません。弁護士には法律上の守秘義務があります。
  • 請求・交渉の段階:請求書を送ったり、弁護士が代理人として連絡したりすると、会社は請求の事実を知ります。
  • 労働基準監督署に申告した場合:監督署は会社を調査するため、会社に知られないとは限りません。

不利益な扱いに対する法律上の歯止め

「請求したら仕返しをされるのでは」と不安に思うのは自然なことです。法律には、次のような歯止めがあります。

  • 労働基準監督署への申告:申告を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(労働基準法104条2項)。
  • 労働局の助言・指導やあっせん:これらを求めたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁止されています(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条3項・5条2項)。
  • 解雇:客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。残業代を請求したことだけを理由とする解雇が有効と認められる可能性は低いと考えられます。

配置転換や降格などの扱いも、目的や経緯によっては権利の濫用として争える場合があります。ただし、法律があるから不利益が一切起きないとまではいえません。不自然な扱いを受けたときは、日時、内容、相手を記録しておくことが大切です。

在職中と退職後の違い

項目 在職中に請求 退職後に請求
資料の集めやすさ 集めやすい 集めにくくなる
会社との関係 気まずさを感じることがある 気にせず進めやすい
時効 給料日ごとに進む 退職後も同じく進む
遅延損害金 法定利率(年3%)が原則 退職後は原則年14.6%

退職後の年14.6%は、賃金の支払の確保等に関する法律6条によるもので、退職金は対象外です。会社が合理的な理由で裁判所で争っている期間などの例外もあります。

退職後まで請求を待つ間にも、古い月の分は時効にかかっていきます。在職中に請求するか、準備だけ進めて退職後に請求するかは、証拠の状況と時効の残り期間を比べて決めるのが現実的です。

在職中に進めたい準備と証拠

  • 自分の勤怠記録と給与明細を、会社のルールに反しない方法で保存する
  • 雇用契約書、就業規則、賃金規程のうち自分に関係する部分を確認する
  • 始業・終業・休憩の時刻と業務内容を、その日のうちにメモする
  • 残業を指示された連絡や、業務量が分かるやり取りを把握しておく

会社のシステムへの無断アクセスや、顧客情報など業務と関係のない機密情報の持出しは避けてください。

長時間の残業が続き、眠れない、食欲がないなどの不調がある場合は、請求の準備よりも体調を優先し、医療機関の受診を検討してください。

在職中に請求するときの流れ

  1. 証拠を集め、未払い額の目安を出す:月ごとに、働いた時間と支払額を整理します。
  2. 弁護士に相談し、方針を決める:在職中に請求するか、退職後にするか、時効の状況も含めて検討します。
  3. 請求の方法を選ぶ:本人からの申入れ、弁護士による代理、労働基準監督署への申告のどれを使うかを決めます。
  4. 書面で請求する:弁護士が代理人になった場合は、会社とのやり取りの窓口は弁護士になります。
  5. 交渉し、まとまらなければ裁判所の手続を検討する:労働審判や訴訟を利用します。

時効との関係

残業代は、在職中でも給料日ごとに3年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条3項)。内容証明郵便などで請求すると6か月は時効の完成が猶予されますが、相談しただけでは止まりません。「退職してから請求しよう」と考えている場合も、一番古い未払い月がいつ時効にかかるかを確認しておきましょう。

よくある質問

Q. 請求したら、職場にいづらくなりませんか?

不安を感じる方は少なくありません。弁護士に依頼すれば、会社とのやり取りは弁護士が行うため、直接交渉する負担は減らせます。不利益な扱いを受けた場合に備えて、記録を残しておくことも大切です。

Q. 同僚と一緒に請求することはできますか?

残業代の請求権は一人ひとりの権利ですが、同じ会社の複数の人が同時期に請求することもできます。働き方や証拠は人によって違うため、請求額はそれぞれ計算します。

Q. これからの残業代を正しく払ってもらうことも求められますか?

過去の未払い分の請求とあわせて、労働時間の正しい記録や、今後の残業代の支払を求めることができます。会社が応じない場合は、労働基準監督署への申告も選択肢になります。

まとめ

  • 在職中でも残業代は請求でき、相談の段階では会社に知られません。
  • 申告などを理由とする不利益な扱いには、法律上の歯止めがあります。
  • 在職中は証拠を集めやすく、退職後は会社との関係を気にせず進めやすい面があります。
  • どちらを選ぶ場合も、時効は給料日ごとに進みます。

在職中の進め方に不安がある場合は、残業代請求の流れの「会社に知られたくない・報復が心配な方へ」も参考にしてください。会社に知られることが不安な場合は、ご希望の連絡方法や時間帯をお問い合わせでお伝えください。

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