残業代は「1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間」で計算します。給与明細から基礎賃金を出し、勤務記録から残業時間を区分すれば、未払い額の目安を自分で確かめることができます。ただし、計算から外せる手当や固定残業代の扱い、会社の労働時間制度によって結果が変わるため、正確な金額は資料をもとに判断する必要があります。
この記事で分かること
- 残業代の基本の計算式
- 給与明細から1時間当たりの基礎賃金を出す方法
- 割増率の区分と、前提を示した計算例
- 固定残業代が支払われている場合の考え方
残業代の計算式とは
残業代(割増賃金)は、「1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間」で計算します。
基礎賃金は、給与の総支給額ではありません。法律上計算から外せる一部の手当を除いた金額を、所定労働時間で割って求めます(労働基準法施行規則19条・21条)。
なお、所定労働時間を超えても1日8時間・週40時間以内に収まる残業(法内残業)は、法律上の割増の対象外です。この部分は、就業規則や契約の定めに従って計算します。
残業代を計算する手順
- 基礎賃金に含める賃金を確認する:計算から外せるのは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類だけです。役職手当や皆勤手当などは含めます。
- 1か月平均所定労働時間を出す:月によって所定労働時間が違う場合は、1年間の平均を使います。例えば「(365日−年間休日)×1日の所定労働時間÷12」で求めます。
- 1時間当たりの基礎賃金を出す:基礎賃金を、1か月平均所定労働時間で割ります。
- 残業時間を区分する:法定時間外、月60時間を超える部分、法定休日、深夜に分けて、それぞれの時間を数えます。
- 割増率を掛けて合計し、支払済みの額を差し引く:残業手当や固定残業代として受け取った額との差額が、未払い額の目安です。
手当を計算から外せるかどうかは、名称ではなく実質で判断されます。例えば、住宅の費用に関係なく全員に一律で支払われる住宅手当は、基礎賃金に含めなければなりません。手当の支給基準は、賃金規程で確認します。
割増率の区分
| 労働の区分 | 賃金の倍率(最低限) |
|---|---|
| 法定時間外(月60時間まで) | 1.25倍 |
| 法定時間外(月60時間を超える部分) | 1.5倍 |
| 法定休日 | 1.35倍 |
| 法定時間外+深夜 | 1.5倍 |
| 法定休日+深夜 | 1.6倍 |
深夜(午後10時〜午前5時)の労働には0.25倍分が上乗せされます。月60時間を超える時間外労働が深夜に及ぶと、割増率は75%です。一方、法定休日に8時間を超えて働いても、時間外の割増は重なりません。詳しくは厚生労働省の「時間外・休日労働と割増賃金」で確認できます。
前提を示した計算例
例えば、次の条件で1か月分を試算します。
- 基本給25万円、役職手当2万円、通勤手当1万円(通勤距離に応じて支給)、家族手当1万円(扶養家族の人数に応じて支給)
- 年間休日120日、1日の所定労働時間8時間
- その月の法定時間外労働30時間(うち午後10時以降が5時間)、残業手当の支払はなし
- 円未満は、1時間当たりの金額の段階で50銭未満切捨て・50銭以上切上げ(行政通達で認められている端数処理)
- 基礎賃金:25万円+2万円=27万円(通勤手当と家族手当は、支給の実質から計算に含めない前提)
- 1か月平均所定労働時間:(365日−120日)×8時間÷12=約163.33時間
- 1時間当たりの基礎賃金:27万円÷163.33時間=約1,653円
- 時間外労働:1,653円×1.25=2,066円、2,066円×30時間=61,980円
- 深夜の上乗せ:1,653円×0.25=413円、413円×5時間=2,065円
合計は64,045円で、これがこの月の未払い額の目安です。仮に固定残業代として4万円が支払われていて、その定めが有効な場合は、差額の24,045円が目安になります。未払いが続いている場合は、時効にかかっていない月ごとに同じ計算を積み上げます。
計算に必要な資料
- 給与明細:基本給と手当の内訳、残業手当の支払額を確認します。
- 賃金規程・就業規則:手当の支給基準、所定労働時間、割増率、締日と支払日を確認します。
- 雇用契約書・労働条件通知書:固定残業代の定めがあるかを確認します。
- 会社の年間カレンダー:年間休日の日数を確認します。
- 勤務時間の記録:タイムカード、勤怠システム、パソコンのログ、日々のメモなどで残業時間を確かめます。
資料が一部しかない場合も、手元にある月で試算してみると、請求を検討する目安になります。足りない資料は、会社への開示の求めなどで補える場合があります。
計算した後の進め方と期限
計算結果は、会社に請求する際の根拠になります。残業代は給料日ごとに3年で時効にかかるため、計算に時間をかけすぎず、古い月の分から失われていく点に注意してください(労働基準法115条・附則143条3項)。内容証明郵便などで請求すると、6か月間は時効の完成が猶予されます。
よくある質問
Q. 月によって出勤日数が違う場合はどう計算しますか?
月給制で月ごとに所定労働時間が異なる場合は、1年間の1か月平均所定労働時間で割って1時間当たりの金額を出します(労働基準法施行規則19条)。会社の年間カレンダーで年間休日を確認しましょう。
Q. 数分の残業も計算に入りますか?
労働時間は原則として1分単位で計算します。1か月の合計で30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は認められていますが、1日ごとに切り捨てることはできません。
Q. 会社の計算と自分の計算が合わない場合は?
基礎賃金に含める手当、所定労働時間、どの時間を労働時間と数えるかで差が出ることがよくあります。会社に計算の根拠を示してもらい、どこに違いがあるかを確認することが大切です。
まとめ
- 計算式は「1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間」です。
- 計算から外せる手当は7種類に限られ、名称ではなく実質で判断されます。
- 時間外・休日・深夜で割増率が異なり、組合せによって上乗せが変わります。
- 固定残業代があっても、実際の残業代が上回れば差額を請求できる可能性があります。
まずは直近の給与明細1か月分で試算してみてください。計算結果に不安がある場合は、残業代請求の相談で資料を一緒に確認することもできます。
